単独作品にした
少し前まで「誠実と残酷と」の「そうならなかった願いの話」として
一緒にしてたんですが
これはこれで独立させた方がいいかなと思いました。
「誠実と残酷と」に比べたら
かなり明るい話だと思います。
いつものごとく一部抜粋します。
これももちろん自信作です。
良かったら読んでみてください!
第一章:心当たりのない再会
第一話:ある日、駅チカで急に声をかけられた
第一話:ある日、駅チカで急に声をかけられた
俺は笹川昂輝。25歳。東京駅八重洲口から徒歩10分くらいのところにある路面店の美容室のスタイリストだ。
この春、同期の中でも一番早くスタイリストに選ばれた。うれしかった。俺は表向きはクールに装い、日頃の努力を見せないようにふるまっていたが、実は裏でめちゃくちゃ努力していた。
店舗オーナーは俺があまりにも遅くまで練習をするものだから、もはや俺にだけ、店の閉店時の鍵のかけ方を教えてくれた。
そんな様子を、同期や、他のアシスタントには見せずに頑張ってきた。
美容の仕事は楽しい。
俺は女性にしろ、男性にしろ、見た目を整えた方が人と関わる機会も増えるだろうと思ってる。
見た目を整えてないことが悪いとは言わない。
だが、明らかに機会損失だろうという考えを持っていた。
俺のところに来たお客さんは、絶対に来る前より良くしてみせる。
そんな気持ちで仕事に取り組んでいた。
そして、俺はスタイリストになってからも練習をやめなかった。
努力を止めることは、もはや俺の中では「前進が止まる」みたいな軽い恐怖を覚えることだった。
続く